【京都市西京区・大原野】築150年の町家で味わう、アジア産シングルオリジン珈琲——映画照明から農家へ、夫婦二人が紡ぐ物語
京都市西京区大原野北春日町。大原野神社からほど近い静かな集落に、暖簾をくぐると畳の座敷が迎えてくれる一軒の珈琲店があります。築150年の日本家屋をそのまま活かした「牧野珈琲」は、2025年6月にオープンしたばかり。店主・牧野秀樹さんと奥様・夏さんが二人三脚で営む、珠玉の自家焙煎珈琲店です。2026年3月8日に訪れてみました。

秀樹さんの経歴は異色そのものです。兵庫・出石町の料理人家庭に育ちながら、父に「料理はお前に向いていない」と言われ映画の世界へ。映画専門学校を卒業後、京都の照明会社に就職し、松竹・東映の撮影所に出入りする日々を送りました。忙しい現場での缶コーヒー三昧の生活のなか、ある日立ち寄った京都の珈琲店で「珈琲って、こんなに美味しいのか」と衝撃を受けます。

そこからのめり込み方は本格的でした。自ら焙煎し、友人・家族に振る舞ううちに「人の豆ではなく、自分で育てたい」という思いが募り、28歳で沖縄・久米島へ。農業未経験ながら祖父の知恵を借りて珈琲栽培に挑み、大阪の老舗珈琲店での修業も経て、久米島で「牧野珈琲」を開業。百貨店や有名レストランへの卸で評判を呼び、11年間にわたって島で腕を磨き続けました。

その久米島で出会ったのが、夏さんです。仕事の縁で島を訪れた夏さんの実家が、まさにここ大原野でした。「やり尽くしてから戻ろう」——そんな二人の思いが結実し、夏さんの実家の町家を舞台に京都での新章が始まりました。

珈琲へのこだわりは、産地選びから始まります。秀樹さんが力を入れるのは、ベトナム・インド・インドネシア・ミャンマーなどアジア産のシングルオリジン。「アジアの豆には親和性を感じるし、これからどんどん伸びていく」と、実際に現地生産者のもとへ足を運び、顔の見えるつながりから厳選した豆だけを焙煎します。珈琲とのペアリングにも妥協なく、デザートには地元・大原野の名店「上田とうふ」の豆乳を使ったチーズケーキや、沖縄・多良間島産黒糖のタルトを添えます。

実際に食してみると、ちょうど良いあんばいの温かさで出されるほろ苦く極上すぎる珈琲としっとりと弾力のあるチーズケーキやほどよいカリカリ感の黒いタルトも抜群の美味さです。取材を忘れてほっこりしてしまいました。

お店では、夏さんが客を席へ案内したらそっと奥へ引きます。3時間滞在する人もいるという(90分でお願いしております。)ゆったりとした空間は、「本当に家なので」という夏さんの言葉通り。代々受け継がれた五段飾りのお雛様や屏風、友人の陶芸家に特注した器が、静かな時間をさらに豊かに彩ります。
- 住所
- 京都市西京区大原野北春日町255
- 営業時間
- 12:00〜17:00
- 定休日
- 不定休(SNSにて要確認)
- 最寄り駅
- 阪急桂駅
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。






