【京都市西京区】冬に咲くフキノトウと古墳の祠―かぐや姫伝説が息づく大原野の里山散策
春のような陽気に誘われて、京都市西京区大原野の灰方から府道733号柚原向日線を西へ向かいました。道の両脇には、冬とは思えない景色が広がっていました。大原野の農家が丹精込めて育てるフキ畑では、青々とした大きな葉の間から黄色いフキノトウの雄花が顔を覗かせています。本来なら2月から3月に咲くはずの花が、暖冬に誘われて早々と開花したのでしょう。畦道には紫色のホトケノザも咲き、まるで早春の訪れを告げるかのようです。

遠くには山並みが連なり、ビニールハウスが点在するのどかな田園風景が心を和ませます。電動自転車でも息が上がるほどの坂道を進むと、金蔵寺道への分かれ道に到着します。右手の金蔵寺道を進んでいくと、すぐに現れるのが長峯八幡宮です。正式には八幡宮社と呼ばれるこの小さな社は、見過ごしてしまいそうなほどひっそりと佇んでいますが、その魅力は格別です。小高い場所に建つ祠へと続く石段は、野面積みの石垣とともに趣深い雰囲気を醸し出しています。

この八幡宮の最大の特徴は、社殿が古墳時代後期の円墳「八幡宮1号墳」の上に建っていることです。横穴式石室を持つ古墳の上で、応神天皇と天照大神が静かに祀られています。拝殿内には八幡神の神使である鳩を模した愛らしい「狛鳩」が置かれ、社殿前には鹿の子模様が美しいカゴノキが聳えています。

この地は、古代に石棺製作を職能とした石作氏が拠点としていた場所です。石作氏は火明命を祖とする氏族で、垂仁天皇の時代に皇后のために石棺を献上したことから「石作大連公」の姓を賜りました。一説には、式内社「石作神社」が元々この地に鎮座していたとも伝えられています。

興味深いことに、この石作氏は『竹取物語』とも深い関わりがあります。かぐや姫に求婚する五人の貴公子の一人「石作皇子」は、石作氏を一族に持つ多治比島がモデルとされています。石作皇子がかぐや姫から「仏の御石の鉢」を持ってくるよう求められる場面は、石を扱う氏族の名と巧みに結びつけられた作者の言葉遊びでした。

八幡宮の左側には「かごの木ひろば」という児童公園があります。遊具はやや古びていますが、地域の子どもたちを見守り続けてきた温かみが感じられる空間です。さらに金蔵寺道を進むと、風情ある竹林が現れます。陽光が差し込む竹林は、まさに竹取物語の舞台にふさわしい美しさです。その先には煙突から煙が上る「小野建築設計事務所のんびり舎」というログハウス調の洒落た施設が見えてきます。

古墳の上の小さな八幡宮、石作氏の伝承、かぐや姫伝説、そして今も続く農家の営み。大原野の金蔵寺道には、冬の日差しの中で春を待つフキの花のように、時を超えた京都の奥深い魅力が静かに息づいています。
- 住所
- 京都府京都市西京区大原野石作町1199
- 最寄り駅
- 阪急桂駅
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。





